DOCTOR INTERVIEWドクターインタビュー


あらゆる痛み、
神経の機能異常から起こる症状が対象
原因を探り、的確に適切な治療を。

ペインクリニックセンタードクターインタビュー

ペインクリニックセンター長 御村 光子

    

 痛みはさまざまな病気に伴います。痛みを総合的に診る診療科として、近年注目を集めているペインクリニック。当センターは、1日あたり3人の医師が外来治療を担当。看護師3人、メディカルアシスタント1人も配置した充実の診療体制で、“痛みの専門家”として多くの患者の治療を行い、生活の質(QOL)向上を実現している。(2021年8月現在)
 痛みの診療を主な対象とするペインクリニックの役割、当センターが実践するペインクリニック医療の特色、日々の診療に対する思いなど、日本ペインクリニック学会ペインクリニック専門医の御村光子ペインクリニックセンター長にお話を伺いました。


近年、医療機関の看板に「ペインクリニック」の文字をよく目にするようになりました。ペインクリニックってどんな診療科ですか?

 ペインは日本語で「痛み」。直訳すると「痛みの外来」ですが、実際にどんな症状で受診したらいいのか分からない人も少なくないと思います。
 ペインクリニックは、痛みと神経の機能異常から起こる症状診断と治療をする専門分野の一つです。治療の対象は頭から足の先までの「あらゆる痛み」です。頭痛全般、首や肩の腕の痛みやしびれ、腰・下肢の痛みが含まれます。原因別では椎間板ヘルニアによる痛み帯状疱疹の痛みや帯状疱疹後の神経痛、けがや手術の後の長引く痛み、がんとがんの治療後の痛み、血行障害による痛みなどです。また、突発性難聴や止まらなくなるしゃっくり、顔の表情がコントロールできなくなる顔面神経まひ、自らの意思とは関係なく顔の片側がけいれんを起こす顔面けいれんなど、痛みが主たる症状ではないですが、神経の働きの亢進や低下による病気や症状も治療の対象となります。
 痛みを部位別ではなく、体のあらゆる角度から捉えるのがペインクリニックです。これまで他のクリニックや診療科で治療しても治らなかった痛み、原因が分からない痛みに対して、私たちペインクリニックの医師は専門的な知識・技術をもとに、症状などから痛みの原因を探っていきます。的確な診断なくして適切な治療を行うことはできません。じっくりと患者さんの痛みについて聞くことから始まり、必要と思われるさまざまな検査を行って総合的に診断し、患者さん一人ひとりの要望や生活に合わせたいろいろな治療法を提案します。  診療科にペインクリニック(科)を掲げていても、その医療機関によって治療内容はさまざまで、力を入れているところが違います。難治性の疼痛や特殊な疾患による痛みについては、ある病院(ペインクリニック)で治療ができないといわれても、別の病院では治療ができるといったケースもまれではありません。


ペインクリニックではどのような治療が行われますか?

 ペインクリニックでの代表的な治療法は「神経ブロック」です。痛みを引き起こしている神経やその周辺に薬液を注入するもので、迅速に痛みを軽減させる効果が見込めます。患部のみに作用するため、内服や点滴の痛み止めと比べて全身や内臓への負担が少ない低侵襲な治療といえます。現在、ペインクリニックで用いられる神経ブロックは保険適用されるものだけでも50種類以上あり、必要に応じてレントゲン透視装置、超音波診断装置を用い、安全、確実な治療をめざしています。薬物療法、理学療法(リハビリテーション)などを保存療法として手術療法と対比させることがありますが、神経ブロックはより積極的な保存療法と位置づけてよいと思います。


センターではどういった病気の診療に力を入れていますか?

 頻度が高い疾患は変形性脊椎症、頸椎・腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症など脊椎由来の病気です。そのほか、「緊張型頭痛」や「片頭痛」などの頭痛、体の奥に潜んでいた“水ぼうそうウイルス” が再び活発化して引き起こされる「帯状疱疹」や帯状疱疹の発疹が治った後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」の患者さんも多いです。
 当センターでは、一般的な痛みに対する治療のほか、難治性の疼痛の緩和、がんによる疼痛の緩和にも力を入れています。これは、難治性の「末梢血管障害」による痛み、骨折や捻挫、打撲などの外傷や手術の後に徐々に痛みが増強し慢性化する「複合性局所疼痛症候群」、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの手術後も痛みやしびれが続く「脊椎手術後疼痛症候群」などに対し、体内に埋め込んだ専用の機器から微弱な電気を流して痛みの緩和を図る治療法(脊髄刺激療法)を実施。痛みの軽減に効果を上げています。各種がんの痛みの治療については、すい臓がん、胃がんなどには内臓神経ブロックで上腹部・背部痛の軽減・消失を図り、直腸がん術後の旧肛門部の痛みが続き、座位が難しい患者さんなどにも神経ブロックを行なっています。
 また、多汗症・赤面症に対する手術治療を実施していることも当センターの強みです。多汗症や赤面症で人知れずお悩みの方、どの診療科を受診すればいいか分からずお困りの方は一度相談にいらしてください。


多汗症・赤面症とはどのような病気ですか?また治療についても教えてください。

 緊張時に手のひらや足の裏、脇、顔、頭から多量の汗が出る「原発性局所多汗症」で日常生活に支障をきたし、悩んでいる人は多いです。2009年に発表された東京医科歯科大による疫学調査によると、手のひらの原発性局所多汗症は人口の4〜6%に認められるとされ、手のひらの上で汗が水玉になったり、垂れるほどになったり、勉学、人間関係、職業選択や就業にも支障をきたすケースが少なくないです。赤面症を合併することもあります。主に感情的な刺激や精神的な緊張・興奮が原因で発汗するため、残念ながら自然に治ることはありません。ただの“汗かき”とは違います。
 治療法によってさまざまな診療科が関与しますが、一般的には皮膚科や心療内科などを最初に受診し、それでも改善がみられないためペインクリニックを訪れるケースが多いです。
 治療は症状が比較的軽度な場合は、飲み薬や塩化アルミニウムを含んだ塗り薬、ローションを使ったり、手足の汗では電流を流した水に患部を浸す「イオントフォレーシス」を行なったりすることで改善する可能性があります。これらの治療で患者さんが十分な効果を感じられないとき、当センターでは発汗にかかわる交感神経の一部を切断する「胸腔鏡下交感神経遮断術」を行なっています。手のひらなど汗が原発性手掌多汗症の場合、手術後ほとんどの患者さんにおいて汗は止まるかかなり減少します。長年の多汗症・赤面症から解放されたときの患者さんの笑顔を見ると、われわれも喜びを感じます。全道各地から問い合わせをいただき、現在年間約50件の手術療法を実施しています。
 ただし、続発症として背中や腹部、下半身など別の部位の発汗が増える「代償性発汗」は必ず起こります。その程度には個人差があり、“気にならない”というものから“想像以上”というものまでさまざまで、胸腔鏡下交感神経遮断術を望む患者さんには、代償性発汗について入念に説明して同意を得た上で手術しています。


最後に読者へのメッセージをお願いします。

 患者さんの訴える痛みをただ軽減・消失させるだけでなく、もっと診療を掘り下げて、突き詰めて「患者さんのためになることは全部やる」という思いで日々の診療にあたっています。最善と思われる治療をしても痛みがゼロにならないケースもありますが、その中で患者さんの生活の質(QOL)、日常生活動作(ADL)、満足度を少しでも上げるために何ができるかを考えることを大切にしています。もう一つは、その痛みなどの症状が命にかかわるサインかどうかを慎重に見分けること。ペインクリニックの検査からがんなど重篤な病気が発見されることがままありますが、そういったとき、速やかに院内の各診療科の専門医に精密検査、治療を依頼できるのも、総合病院にあるペインクリニックの大きなメリットといえます。
 痛みは我慢するものではありません。痛みが循環障害を招き、さらに痛みを拡大させる悪循環に陥ってしまいます。また、時間が経てば経つほど治療を行なっても痛みを取り除くことが難しくなります。痛みは、できるだけ早期に治療することが肝心です。これまでどこも悪くないといわれた、検査でも異常が見つからない──にもかかわらず痛みが続いているなら、どうか我慢したり諦めたりせず、痛みの治療を専門とするペインクリニックを受診してみてください。

    

         

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