病院には、さまざまな医療機器が導入されています。近年の医療技術の進歩により、これらの機器はますます多機能化・複雑化しており、専門的な知識と技術による管理が求められています。
臨床工学技士は、医学と工学の両方の知識を活かし、高度な医療機器の操作・保守点検・管理を担う専門職です。1988年に国家資格として制度化された比較的新しい職種であり、まだ知名度は高くありませんが、医療現場では欠かせない存在です。
当院では、臨床工学技士が24時間体制で医療機器の安全管理に取り組み、患者さんに安心・安全な医療を提供できるよう日々奮闘しています。人工呼吸器や透析装置、心臓ペースメーカーなど、命に関わる機器の管理を通じて、医療チームの一員として重要な役割を果たしています。
当院の人工透析センターでは、40床の透析ベッドを備え、月・水・金は3クール、火・木・土は1クール体制で透析療法を行っています。
臨床工学技士は、プライミング・穿刺・返血などの臨床業務に加え、透析装置の管理や修理、透析用水の水質管理、ベッドの管理など、透析環境全体の安全と安定を支える業務を担っています。
また、慢性維持透析に加え、潰瘍性大腸炎やクローン病に対する白血球除去療法、難治性腹水症に対する腹水濾過濃縮再静注法、血漿交換療法などの特殊血液浄化療法にも対応しています。
集中治療室では、持続緩徐式血液濾過装置や多用途血液浄化装置を用いて、急性腎不全、循環不全、敗血症性ショックなどの重篤な状態に対する急性血液浄化療法を実施しています。
臨床工学技士は、これらの装置の操作と管理を通じて、集中治療の質と安全性を支えています。
心臓外科手術においては、人工心肺装置や心筋保護液供給装置の準備・操作・管理を行い、手術中の循環維持を担っています。
また、経皮的心肺補助装置(PCPS)の操作・管理も行い、重症患者の生命維持に貢献しています。
手術室では、診療科ごとに異なる医療機器の操作を担当しています。
心臓血管外科や整形外科では自己血回収装置、泌尿器科や眼科ではレーザー装置、外科や産婦人科では鏡視下手術装置の操作を行い、手術の安全と効率を支えています。
院内の医療機器は専用の管理システムにより登録・管理されており、臨床工学技士が定期点検を実施したうえで、外来や病棟へ貸し出しています。
使用後の機器は清掃・点検を行い、再利用可能な状態に整えることで、医療の安全性を維持しています。
循環器内科や心臓血管外科による冠動脈造影やPCIなどの検査では、心電図監視、物品準備、ポリグラフ、IVUS、FFRなどの操作・記録を行います。
さらに、大動脈バルーンパンピング装置(IABP)の操作・管理も担当し、循環管理に貢献しています。
泌尿器科や外科、呼吸器外科、婦人科の手術で使用される手術支援ロボット「ダビンチ」の準備・点検・記録などを行い、精密な手術の実現を技術面から支えています。
臨床工学技士は、病棟や外来においても幅広い業務を担っています。医療機器の安全な運用を支えるため、血液ガス分析装置やAEDなどの機器を対象に定期的な巡回点検を実施しています。
また、ペースメーカ外来ではプログラマの操作を担当し、ペースメーカを挿入された患者さんに対しては、MRI撮影や手術の前後に必要な設定変更も行っています。これにより、検査や治療が安全に行えるよう支援しています。
さらに、睡眠時無呼吸症候群の検査や、閉塞性動脈硬化症などによる末梢循環不良に対して皮膚還流圧(SPP)測定を行い、バスキュラーアクセスの実血液流量測定なども実施しています。
医療機器に関する相談対応や、院内スタッフ向けの研修も行っており、機器の正しい使用方法や安全管理の知識を広めることで、医療の質と安全性の向上に貢献しています。
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