腎癌、膀胱癌、前立腺癌が頻度の高いもので、いずれも50代以上の中高年齢者に多く発症します。
症状は、腎癌、膀胱癌では血尿が、前立腺癌では前立腺肥大症と同様な排尿障害が主なものですが、いずれも初期の段階では無症状です。最近は検診や診断技術の発達により、初期のうちに見つかる偶然発見例が増加しています。特に前立腺癌は、血液中の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)による診断率が高く、患者さんが増加しています。これらの癌に対する治療は、手術療法が中心となります。早期のうちに癌を見つけ、手術にて取り去るのが完治の決め手になります。
手術療法は現在ロボット支援下腹腔鏡手術を中心に行っています。2017年1月からdaVinciXiサージカルシステムを用いた前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術、4cm以下の小径腎細胞癌に対する腎部分切除術、4cmを超える腎細胞癌に対する根治的腎摘除術、腎盂癌および尿管癌に対する根治的腎尿管摘除術、膀胱癌に対する根治的膀胱摘除術がロボットを用いた腹腔鏡手術で行っています。
手術以外の治療としては、腎癌に対しては分子標的薬剤や免疫チェックポイント阻害薬による治療、膀胱癌に対しては抗がん剤あるいはBCGの膀胱内注入療法、膀胱癌、腎盂癌・尿管癌といった尿路上皮癌に対しては抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬による治療が行われます。
前立腺癌では早期の前立腺限局癌に対してはロボット支援下腹腔鏡下根治的前立腺摘除術や放射線療法、局所進行癌に対しては内分泌療法併用放射線療法、進行癌に対しては内分泌療法や抗癌剤治療が行われます。当科ではロボット支援下腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を行う場合、術後の性機能や尿禁制保持を目的に可能な限り勃起神経温存手術を行っています。
放射線治療に関しては前立腺内に金マーカーを挿入することで精度の高い放射線治療が放射線科の医師により行われています。早期前立腺癌で、悪性度が比較的低いものに対しては無治療経過観察(PSA監視療法)も選択肢の一つとなります。
手術療法や放射線治療法のほかに抗男性ホルモン剤による内分泌療法も行われ、同等の治療成績をあげています。進行した前立腺癌に対しては、放射線療法や内分泌療法が行われます。
腹腔鏡手術はお腹を切らずに3から6本のトロカーという筒を挿入し、カメラでお腹の中を見ながら様々な器具を挿入して手術を行う低侵襲手術です。当科では、日本泌尿器内視鏡学会および日本内視鏡外科学会により認定された泌尿器腹腔鏡技術認定医により安全な手術を行うよう努めています。腎臓、腎盂、尿管、前立腺の悪性疾患に対してはロボット支援下腹腔鏡手術が、副腎腫瘍や水腎症などの良性疾患や前立腺癌における病期決定を目的とした骨盤リンパ節郭清術、非触知精巣の診断などに対して腹腔鏡手術を行っています。
男性で夜間あるいは昼間頻尿、残尿感、尿勢低下、尿線途絶、尿意切迫感などの症状があれば前立腺肥大症を疑います。多くの症例ではアルファ交感神経受容体阻害薬、5アルファ還元化酵素阻害薬、それらの併用による薬物療法をまず初めに行います。しかし、繰り返す尿閉、水腎症、尿路感染症を合併する症例、前立腺が大きい症例や自覚症状が強い症例で将来的に急性尿閉を起こすリスクが高い症例に対しては積極的に手術を行います。2023年5月からRezum(レジューム)を用いた水蒸気治療(WAVE治療)を開始しています。従来の内視鏡手術と比べて短い手術時間で行われ、出血はほとんどない低侵襲で安全な治療です。
尿路結石症は、尿が作られて排出されるまでの経路に結石ができる病気で、腎、尿管、膀胱などに結石ができて、突然に背中、脇腹、下腹部などに強い痛みを発生し、同時に血尿が出現します。
20代から50代に多く、男性のほうが女性の2.5~3倍多く起こります。結石の成分はシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムからなるカルシウム含有結石のほかに、代謝異常による尿酸結石やシスチン結石などがあります。
治療は、小さなものはまず自然排石を促すようにし、排石がない場合や排石の見込みがない大きな結石に対しては、体外衝撃波による破砕術(ESWL)や内視鏡による経尿道的破砕術などを行います。
当科では、ESWLは痛みが少なく破砕力が強い装置を導入して日帰りで施行しています。経尿道的腎尿管結石破砕術はホルミウムレーザーを用いて3泊4日で施行しています。
現在約6組に1組が不妊カップルとされ、その約半数が男性側の原因と考えられています。精液中に精子がいない無精子症、精子の数が少ない乏精子症、精子運動率が低下している精子無力症、勃起障害、射精障害などがあります。現在、男性不妊症に対する有効な薬物療法はなく、非閉塞性無精子症に対する顕微鏡下精巣内精子採取術(MD-TESE)、精索静脈瘤に対する顕微鏡下精索静脈瘤切除術などの外科的治療を積極的に行っています。
性機能障害はED(erectile dysfunction)といわれ、勃起力低下あるいは勃起消失を自覚するものです。EDはストレスなどによる心因性EDと動脈硬化や糖尿病による血管障害や末梢神経障害を原因とする器質性ED、さらには両者の混合型に分けられます。
いずれにしても薬物療法がまず行われます。しかし、一部の症例では薬物療法に抵抗性であり、当科では陰茎内プロスタグランディン自己注射療法を施行しています。近年ED患者はかなり多いと推測されています。EDに対する治療は生活の質(クオリティーオブライフ:QOL)向上に重要と考えられています。
原因のほとんどは、尿道から細菌が入り込んでおこる上行性感染です。
特に淋菌やクラミジアによる男性の尿道炎は性感染症であり、最近は若年齢での増加が危惧されています。これらの感染症は、自覚症状や細菌検査により診断され、治療は抗菌剤による化学療法が基本です。治療に対しては比較的よく反応しますが、再発する場合には原因疾患の究明が、また感染を繰り返す場合には適切な予防策の実行が必要です。
更年期障害は女性特有のものと考えられていましたが、近年男性においても加齢に伴う緩やかな血中男性ホルモンの低下が種々の症状を引き起こしていることが明らかとなってきました。
症状は多彩で、筋力低下、脂肪増加、骨粗鬆症、ほてりなどの身体的症状、不眠、いらいら、うつ、記憶力低下などの心理的症状、性欲低下、EDなどの性機能症状があります。さらに男性ホルモン低下がメタボリック症候群や心血管系疾患の危険因子であると報告されています。男性ホルモン低下群では死亡率(全死亡率、癌死亡率、心血管系死亡率)が高いとする報告もあります。
当科では適応のある症例に対して男性ホルモン補充療法を施行しています。
急におしっこがしたくなる尿意切迫感、そして尿を漏らしてしまう切迫性尿失禁を自覚される方が増えています。
従来の抗コリン薬の他にも交感神経刺激薬が登場し、治療の幅が広まっています。水分摂取量などの生活習慣を見直すだけで改善する場合もあります。当科では排尿日誌や尿流測定などの精査を十分施行してから治療を選択しています。
外来名 |
診療日 |
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男性不妊・性機能 更年期外来 |
毎週月曜日・金曜日/午前 |
ストーマ専門外来 |
毎週月曜日・金曜日/午前(要予約) |
手術 |
ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術 |
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内容など |
腫瘍径が4cm以下の小径腎癌に対して施行します(入院7泊8日) |
手術 |
ロボット支援下腹腔鏡下根治的腎摘除術 |
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内容など |
腫瘍径が4cmを超える場合に施行します(入院6泊7日) |
手術 |
ロボット支援下腹腔鏡下根治的腎尿管摘除術 |
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内容など |
腎・尿管・膀胱の一部を摘除します(入院8泊9日) |
手術 |
経尿道的膀胱腫瘍切除術 |
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内容など |
筋層非浸潤性膀胱癌に施行します(入院4泊5日あるいは7泊8日) |
手術 |
ロボット支援下腹腔鏡下根治的膀胱摘除術 |
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内容など |
筋層浸潤性膀胱癌に施行、尿路変更術(回腸導管造設あるいは回腸新膀胱造設)も同時に施行します(入院3週間前後) |
手術 |
ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術 |
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内容など |
限局性前立腺癌に対して施行します。癌の局在、悪性度によって勃起神経の温存、骨盤リンパ節郭清術を施行します(入院10泊11日) |
手術 |
経尿道的腎尿管結石砕石術 |
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内容など |
ホルミウムレーザーを用いて内視鏡的に腎・尿管結石を砕石、抽石します(入院3泊4日) |
手術 |
体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(ESWL) |
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内容など |
体外から衝撃波で腎・尿管結石を破砕します(外来、あるいは入院2泊3日) |
手術 |
経尿道的前立腺切除術 |
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内容など |
内視鏡的に肥大した前立腺を切除します(入院6泊7日) |
手術 |
経尿道的水蒸気治療 |
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内容など |
内視鏡的に肥大した前立腺に水蒸気を注入し肥大を縮小させます(入院6泊7日) |
手術 |
精巣内精子採取術(MD-TESE) |
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内容など |
顕微鏡下に精巣内から精子採取を試みます(入院2泊3日) |
手術 |
顕微鏡下精索静脈瘤切除術 |
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内容など |
顕微鏡下に精索静脈瘤を切除します(入院2泊3日) |
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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合計 | 612 | 619 | 612 | 606 | 670 |
副腎摘除術 | 9(9) | 4(4) | 5(5) | 6(4)[2] | 6(6) |
根治的腎摘除術 | 12(12) | 9(9) | 14(13) | 14(10)[3] | 23[23] |
腎部分切除術 | 6[5] | 11[11] | 16[15] | 15[15] | 12[12] |
腎尿管全摘除術 | 8(8) | 13(12) | 11(10) | 11(3)[8] | 6[6] |
腎盂形成術 | 2(2) | 0 | 0 | 0 | 0 |
経尿道的尿路結石除去術(TUL) | 65 | 43 | 37 | 18 | 36 |
膀胱全摘除術+回腸導管造術 | 3(3) | 4(4) | 5(5) | 9(3)[6] | 15[15] |
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT) | 103 | 125 | 106 | 109 | 113 |
根治的前立腺摘除術 | 21[21] | 42[42] | 42[42] | 38[38] | 34[34] |
経尿道的前立腺切除術(TUR-P) | 8 | 11 | 10 | 11 | 1 |
経尿道前立腺水蒸気治療(WAVE) | - | - | - | - | 28 |
前立腺針生検術 | 100 | 93 | 103 | 97 | 92 |
尿失禁・膀胱脱手術 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 |
精巣内精子採取術(MD-TESE) | 36 | 31 | 17 | 25 | 25 |
顕微鏡下精索静脈瘤手術 | 50 | 31 | 48 | 58 | 62 |
体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(ESWL) | 12 | 16 | 6 | 10 | 2 |
その他 | 176 | 188 | 192 | 185 | 215 |
※上記の表はいずれの年も1月~12月までの集計値です
():腹腔鏡手術
[ ]:ロボット支援手術
氏名 | 伊藤 直樹 ( いとう なおき ) |
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役職 | 副院長、外科診療部長、泌尿器科部長、手術センター長、化学療法センター長、診療情報管理室長 |
専門分野 | 泌尿器科全般、腹腔鏡手術、排尿障害、泌尿器科腫瘍、男性不妊症、男性更年期障害、性機能障害、女性骨盤臓器脱 |
資格 | 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会 技術認定(泌尿器科領域) 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 日本生殖医学会 生殖医療専門医・指導医 日本性機能学会 専門医 日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・指導医 泌尿器ロボット支援手術プロクター da Vinci Surgical System certificateドクター 札幌医科大学大学院 臨床教授 札幌医科大学 臨床教授 難病指定医 医学博士 Best Doctors 2024-2025 Doctor of Doctors Network 優秀専門臨床医 2022-2025 |
氏名 | 柴森 康介 ( しばもり こうすけ ) |
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役職 | 医師 |
専門分野 | 泌尿器悪性腫瘍、前立腺肥大症 |
資格 | 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医 da Vinci Surgical System Certificate ドクター |
氏名 | 野藤 誓亮 ( のふじ せいすけ ) |
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役職 | 医師 |
専門分野 | 泌尿器科一般 |
資格 | 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医 |
氏名 | 林 優里 ( はやし ゆり ) |
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役職 | 医師 |
専門分野 | 泌尿器科一般 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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午前 | 伊藤 直樹 (男性不妊・性機能・更年期)※ |
柴森 康介 | 野藤 誓亮 | 野藤 誓亮 | 伊藤 直樹 (男性不妊・性機能・更年期)※ |
野藤 誓亮 | 柴森 康介 | 柴森 康介 | |||
午後 | 予約外来 | 手術 | 予約外来 | 手術 | 予約外来 |
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