膝には大別して、太もも(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、それを覆う軟骨、4つの靭帯と半月板があります。靭帯には前後の安定のために前十字靭帯と後十字靭帯があり、膝の中で交差しています。前十字靭帯は大腿骨の後方から脛骨の前方へ、後十字靭帯は大腿骨の前方から脛骨の後方についています。さらに内外の安定性のために、膝の内外側にそれぞれ内側側副靭帯、外側側副靭帯があります。
また、半月板は大腿骨と脛骨の間にあり、クッションと膝を安定させる2つの役割をしており、前十字靭帯を損傷する時に同時に傷めることが多いです。
激しく膝をねじったり、過度に膝が伸びたりして無理な力(約200kg以上の力)がかかると切れます。
スポーツの最中は、転んだり膝をねじらなくても、急なストップ、ジャンプのときに膝を伸ばして着地したり、スキーで後傾になった時に切れることもあります。
多くの場合、ブチっと音がして切れ、次のような症状がでます。
●痛み、腫れ
●膝のなかに血がたまる
●膝が抜けるような不安定な感じがある。
切れたかどうか調べるには、専門の医師による診察とMRIでほぼ診断がつきます。KT2000という機器で膝の不安程度をはかることも可能です。
痛みがなくても、靭帯が切れた不安定な膝で運動していると、最後には膝全体が傷んでしまう可能性があります。
高齢な方やあまり運動をしない方、リハビリテーションを積極的に行えない方は手術をせず、装具やサポーターをつけて筋力訓練を中心としたリハビリテーションを行います。
切れた靭帯の代わりの腱を自分の膝の裏の内側からとり、ひも状に束ねて移植する手術です。
傷めた膝のまま運動を続けると、十分な活動ができなくなる場合があります。運動をする人や膝をよく使う人は、膝を安定させるため早めに手術を行ったほうがよいでしょう。
膝の内側にある「膝屈筋腱」の一部を使用します。膝を曲げるための腱ですが、取っても膝への影響は少なく、リハビリテーションを行えば筋力は回復します。 靭帯再建時にできる傷からこの腱をとることができるため、新たな傷は増えません。傷はすねの内側に3~4cmほどです。
内視鏡を使って、からだへの影響を最小限におさえて手術を行います。
術中にC-armによるレントゲン画像も使用し、より精度の高い手術を行っております。
骨に穴をあけて、正常のACLと同じ位置になるように移植腱を通し靭帯の代わりのスジを作ります。 原則的に、安田教授(北大スポーツ再建医学講座教授)が考案した、2本の再建材料を使い正常に近い靭帯を再建する方法で手術を行っています。
1. 傷周囲のしびれや、感覚が一部鈍くなることがあります。手術時に太ももの辺りに止血バンドを使用することで、痺れが1~2日残ることがあります。
2. 筋力低下や、術後1ヶ月ほど、膝が伸びにくい、曲がりにくいなどの可動域制限が起こることがあります。決められた通りのリハビリテーションをしっかりやりましょう。
3. 傷や膝の中が化膿することがあります。当院では、手術中の無菌操作や術後の傷の管理の徹底の他、抗生剤の予防的投与、定期的血液検査などの対策をとっています。
人工膝関節手術後は、下肢の静脈に血栓(血の塊)ができ、それが心臓を通って、肺の動脈で詰まる肺塞栓症という合併症のリスクが高まります。靭帯の鏡視下手術ではこのリスクが少ないと言われていますが、当院では予防のため、ベッド上ではフットポンプ、足関節運動、弾力包帯、早期離床などの対策を行い、早期発見、早期治療に努めています。万が一血栓ができたら、専門の医師に治療を依頼しています。
1. 再断裂やゆるみの可能性について
2. 靭帯は手術直後から3~4ヶ月程度はとても弱く、無理な運動や過度の力がかかると伸びたり、切れてしまうことがあります。
3. 無理せず、焦らず、リハビリテーションやトレーニングは決められた指示の範囲内で行って下さい。
4. 手術した膝を手術直後に完全に伸ばすと、再建した移植腱が伸びてしまう可能性があるため、 術後1~2週間は太ももの下をロールタオルなどで高くし、少し曲がった状態を保つようにして下さい。(下図)
<手術後してはいけない姿勢>
下腿(すねの骨)が前に出るような動作(ACLが伸びます)
1. 脚くみ
2. 下腿の下に枕を置く
3. 膝をまっすぐより伸ばす(過伸展)
4. 横すわり
●膝の角度の制限をする。
●過度の外力を和らげる。
●傷めた膝に注意を促す
手術直後から1~2週間使用する装具です。病院から貸し出します。
膝を30度ほど曲がった状態に保つようにできています。
手術後1~2週目から使用する装具です。
腫れや包帯等で太くなった膝や筋肉の萎縮で細くなった膝の状況に対応できるよう、太さを調節できるようになっています。膝の角度も細かく調節できます。入院前に型をとって作成します。
手術後1~2週目から使用する装具です。
太さの調節もできるようになっています。軽量で強度や安定性、保護を与える一方で機能性を重視し、パフォーマンスの妨げにならないデザインでスポーツには最適です。膝の角度も調節可能です。入院前にサイズを測ります。術後用装具もしくはスポーツ用装具のどちらかを使用します。
※装具をした状態でも、無理をすると靭帯が傷む可能性があるので注意が必要です。
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